オーバーツーリズムとサービスデザイン
テレ東BIZにて、先日私もお邪魔した鎌倉高校前駅などがオーバーツーリズムの事例として取り上げられていた。
私がお邪魔したときも観光客の方が多い印象で、学ランか学ランに近いような服装をして道路に踏み出して写真を取っておられる方もいた。
人の行き来や旅行には、その地域にとってのメリット・デメリットがありつつもその地域の人にとっては影響を受けやすく、対して、その地域を訪れる人にとっては一生に一度だったり一過性だったりでトランザクション型的な性質が強く、モラル云々の文化的背景を気にするインセンティブが少ない、というのが正しい状況観察だと考えている。
地域にとってのメリットとしては、経済的にその地にお金を落としてくれて事業者側からしたら売上が上がり、消費税や法人税を通して地域への再分配や福祉的な元手になるものが多くなること。また、人が集まるところ・訪れるところには、更に人が集まってくる・訪れられるという傾向があるため、「人気の地」や「ポピュラーな地」にいる自分!という感覚を人々の醸成させやすく、そういった感情的な満足も達せられることがあるだろう。
地域にとってのデメリットとしては、その地域での常識や倫理規範のようなものではない行動様式の人が一時的にでも入ってくることで、その地域の常識にそぐわないものを受け入れられないときに地域住民から反発が起きたりすること。また、そのような雰囲気や空気的なことではなく、いろんなところにゴミが発生したりということも時にはあるかと思う。逆に、事業者側としてストライキとかが起きたらゴミであふれかえるようなことも発生しているニューヨークとかと比べると、日本は市場経済以外での倫理規範としてキレイにする文化を持っているな、ということも観察できる。
対策としてその地域を訪れる際の電車などの路線の利用料金の値上げなど、市場経済的な解決、ダイナミックプライシング的な解決も当然考えられるが、その論理(市場原理)で解決したいと日本のそれぞれの地域が本当に思っているのかと言うと、正直そうでもないのでは?、と個人的には考えている。
ここでこそ、サービスデザイン的な視点が有効なのではと思う。
例えば、山の休憩所などでは「ゴミを持ち帰ってくれてありがとう」という表現をしている公共の場所がある。これは、「ゴミは持ち帰ってください」とか「ゴミを捨てないで!」といった少し圧迫感のある表現や否定形の表現ではなく、「持ち帰ってくれてありがとう」という「感謝」を一方的にされて返報性の原理を先に投げかけられることでその原因となるような行動(ゴミを持ち帰るという行動)を促す、という表現は1つの方法論として面白い事例だと捉えている。
ここらへんのサービスデザイン的な視点や解決方法は、自治体や企業によって「理解できる人」と「理解できない人」が分かれる部分でもあるので、自治体や企業のクリエイティビティが問われるなと思っているし、経済的な解決法やアプローチ方法以外にも、そもそもの場の設計や標識の設計自体も見直す余地は多分にあると考えている。
別論点として、日本の観光地や観光地周辺の宿泊施設が安すぎるというのは問題だと考えている。瀬戸内海など、もっと金持ちから取れるだけお金を取る、という観点での経済的なアプローチが有効な場面も多分にある。ここのあたりは棲み分けとミックスとをデザインする、サービスデザイナーとビジネスデザイナーの活躍余地がもっとあると考えている。
※ちなみに私も日本で旅行したり山に行ったりしていると「外国人観光客かな?」的な視線や話しかけられ方を浴びることが多いが、日本的モラルでお邪魔するようにしている。