2 min read

再現性とIターン

再現性を追うという指向自体がすでに硬直していると思っている。再現性は、同じインプット→同じアウトプット。誰がやってもだいたい同じ結果になること。裏返せば、あなたじゃなくても私じゃなくてもいい、という交換可能性の言語だ。

Iターン/Uターンは非連続に足場を置く行為。地場の文脈、人的ネットワーク、暗黙知、気候、物流、規制、習慣。それらは「同じ入力で同じ出力」を拒む固有性の塊だ。だから「Iターン転職の成功法」や「再現性のあるやり方」だけを語り出した時点で、地場の唯一性へのリスペクトが薄れる。そもそも定義と逆走している。

再現性は否定しない。ただし、再現する対象を取り違えないほうがいい。Iターンで再現すべきは「出力」ではなく「設計原理」。

— 再現するもの/しないもの

・再現するべきもの
→  プロトコルと見取り図。受発注の設計、情報の流し方、権限と評価のルール、取引コストの分解、意思決定の遅延を最小化する仕組み。SaaS・会計・販売・CS・採用・広報の基本線をプロダクト化し、残差を外部化し、判断と実行の隙間をエージェントで埋める。粗利ベースのNPVで投資判断をする。時給意識は捨てる。

・再現しない/できないもの
→ 地域の色、ネットワークの拓き方、顧客の非言語の勘所、季節性、共同体の敷居。ここは固有性で勝つ領域。プレイブック化しない。探索と関係構築で「最初の10の継続取引」を起こすところから始める。


個人側がやること
・成功法よりも「非連続の取り扱い方」を持つ。履歴の延長ではなく、ゼロからの社外取引を組む力。
・移住初期のKPIは「継続取引の起点×10」「一次情報の更新頻度」「意思決定レイテンシの短縮量」。
・学習は外挿ではなく内挿。地図を広げるより、足元の勘所を深くする。


企業側がやること
・ジョブ定義を静的にしない。Iターン人材にリアルタイム実行権限を渡す。評価・裁量・権限を先に設計する。
・社内取引の見直しを前提に、拠点分散/フルリモートを運用する。迅速化ではなく再設計。


結論。

Iターンは「再現性のある成功法」を輸入する行為ではない。

固有性を尊重しつつ、設計原理だけを慎重且つ大胆に移植する行為だ。

非連続を設計して、価値の因数分解をやり直す。

非連続を連続に織り込んでいく。


#Iターン #Uターン #再現性 #固有性 #非連続 #取引コスト #受発注プロトコル #粗利 #NPV #オペレーション #地方企業 #キャリア #生産性 #economics #capitalism