市場退出率レポート(2022年,TSR)
東京商工リサーチ(TSR)が出しているレポートはときどき読むが、業界別の退出率が推移でまとめられていた。
本文抜粋:
2022年(1-12月)に「倒産」や「休廃業・解散」で市場から退出した法人(以下、退出法人)は、全国で4万7,578件(前年比12.7%増)で、2年ぶりに増加した。普通法人全体(287万3,908件)に占める退出法人数の割合(以下、退出率)は1.65%で、前年から0.16ポイント上昇した。
実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済の本格化や物価高、人手不足によるコストアップなどで倒産が増加しているが、同時に、代表者の高齢化などによる休廃業・解散も増え、退出率を押し上げた。
産業別の退出率は、最高が情報通信業の3.67%で、唯一3%を超えた。ソフトウェア開発が中心の情報通信業は、2013年から10年連続で最高を維持している。競合に加え、政府・自治体の創業支援で小資本での創業も多く、資金調達や市場分析、経営計画の甘さも背景にあるとみられる。
私は前職がM&A仲介、M&Aプラットフォームの業界のスタートアップで、その前が新規事業のコンサルティング、その前が(ブランクを挟んで)スタートアップなので、
- 創業当初の会社
- 村社会の会社
- 「◯◯人の壁」を何回か迎えている会社
- 事業承継や経営者交代などの境目やExit間際/最中の会社
を、所属した会社においてもサービス提供側としての顧客関与でも経験している。
今回のレポートは、
- 出口(Exit)の間際や最中 (株主の交代)
- 経営者引き継ぎ (経営者の交代)
- 退出(清算や破産など) (市場からの交代)
といった交代の種類のうち、3点目の市場からの交代(退出)ところが定量的に簡潔にまとまっているかたちである。
市場からの退出ロジックとしては、
- 営業利益が出ない、キャッシュフローが立ち行かない
- 後継者がいない
というのが理論的には考えられる。
理由としては、営業利益やキャッシュフローが回っていたら、特に目的意識がなくても事業継続する確率が極めて高いためである。また、営業利益やキャッシュフローが出ていても後継者がいなければ続けるという選択肢が取れない/見えないことも考えられる。
本レポートのなかでは情報通信業の退出率の高さが取り上げられている、その背景としては競争面(競争が相対的に激しいという側面)が影響していると考えられる。
ただ、着地点としては着地点としては上記2つのうちのどちらかになる。
主には営業利益とキャッシュフローの点で退出になっている確率が高そうだが、M&Aという観点だと、退出率がそんなに高くない業界で、後継者の発見コストがかかっているところが事業承継M&Aを手掛けるM&A仲介会社・M&Aアドバイザリー会社にとって狙い目となりまそうである。
詳しいデータは下記のグラフ、およびレポートそのものを参照。
個人的なスタンスとしては、営業利益が出ている後継者不足のすべての会社が残るべき、残すべきとは考えていないし、その全てについて後継者不足での営業利益の喪失を「機会損失」と謳っているような会社はナンセンスだと思っている。(M&A業界に入る前からそう思っていて、当該業界を経てもそう思う。)
ただ、M&A市場はビジネス市場としても労働市場としても活況で、キャッシュが私などの世代に大回転・大移動するというのは非常に有意義だと思っている。
また、何が残って何が淘汰されるかというのは結果論かつ確率論的な側面もあるため、どんどんと数を打ってサイクルが加速することには大賛成なので引き続きこういった市場全体の係数についてもウォッチしていきたいと思う。
ちなみにもしM&AアドバイザーやM&A仲介者と会う機会があれば、是非見比べて検討して、「信頼/信用できる人と仕組み」を持っているところに手伝ってもらうのがオススメ。